2015年10月22日~25日(日) 東北被災地ボランティアの旅 田中正雄理事

東日本大震災から4年半が過ぎました。「東北・被災地でのボランティア法律相談会・講演会」が、10月22日から3泊4日の日程で宮城・気仙沼と福島・南相馬市と周辺でありました。世話人の一人がNPOアクト情報交流の副理事を務める大川弁護士ということもあり、NPOの一員として同行しました。震災年の9月が最初で、今夏が5回目。弁護士不在の離島での無料法律相談会を含めると19回目になるということです。旅費をはじめ宿泊、食事などすべて“手弁当”です。

大阪、滋賀、静岡、現地・気仙沼の弁護士7人、元民事調停委員ら3人が参加しました。仙台空港に集合、レンタカー3台に分乗してまずは宮城・気仙沼へ向かう。吉田千春さん(宮城県震災復興情報発信局・ココロプレス気仙沼取材班)にお世話になりました。講演を担当したのは小橋るり弁護士で、「特殊被害に遭わないために~遭ってしまったら~」をテーマに約1時間、“大阪のおばちゃん”らしい熱弁でした。この後、相談会に移り、被災がらみで失業した人らも相談にやってきました。

翌23日、市役所へ菅原茂市長を表敬訪問。気仙沼の現状などを聞き、懇談しました。さらに吉田さんに気仙沼港を案内してもらう。カツオやサンマの水揚げ、選別などを見学。港は活気を取り戻している感じですが、その一方で震災時に火災で大きな被害を受けたという対岸では、トラックなどが走り回り造成中。建設中の高層住宅を何か所も見ることが出来、復興にはまだ少し時間がかかるというのが分かりました。

人里離れた山間に異様な実験用施設が建設中

気仙沼をあとにし福島・南相馬へ。途中、南三陸町では、避難放送を流し続けて津波の犠牲になった女性職員のいた「防災対策庁舎」にも寄り、みんなで手を合わせました。

南相馬市では、小澤洋一さん(南相馬・避難勧奨地域の会事務局長)に大変お世話になりました。放射線で物の汚染の度合いを示すベクレル、生物が放射線を受けたときの影響度を表すシーベルト。これらを測定する線量計を持って、南相馬市とその周辺を案内してもらう。

市街地から少し離れると静かな山村になります。柿の木には美味しそうな実が数多く垂れ下がる。カラスが食べにきてもおかしくない。でも、1羽も見なかった。そう、汚染されて食べることが出来ないのです。家が点在していますが、人の気配がしない。これが現状でした。

また、人が住めない飯舘村の丘陵地帯である蕨平では実験用施設が建設中で、異様な風景でした。汚染土砂や汚泥を選別し熱処理などするそうです。そばに広い墓地が広がっていましたが、住民たちにはほとんど知らされていないようです。

24日は小澤さんの案内で1日、南相馬市とその周辺の被災地を車でめぐりました。いたるところに黒い大きな袋を見ます。汚染物を詰めた合成樹脂製の「フレコンバック」というものでした。若い弁護士が線量計で測ってみると、とんでもない高い値に驚いていました。農村地帯にはフェンスで囲まれた空き地にフレコンバックが3段から4、5段山積みされています。これらを運んでくるトラックが行きかっていました。「これでは放射性物質が拡散され、心配です」と小澤さん。

南相馬市の水がめの一つである横川ダムにも行く。線量計を山側に向けると急に値が高くなった。山林からの放射線が川にも注いでいるようです。果たして水道水は大丈夫なのだろうか。さらに海の魚や貝は、さて…


モミの幼木に育成異常 震災廃棄物など焼却施設が稼動

南相馬市の山間にある人が住んでいる家の軒下にあった木製の縁台からは異常に高い放射線量が記録されていた。その家の庭にあったモミの幼木で、枝の変形など育成異常が多く見られました。これも放射線の影響なのか。

南相馬町の隣にある浪江町では、300頭の被ばく牛を飼っている牧場を訪れました。原発事故の“生き証人”ともいわれ、何とも悲しい風景である。福島第二原発の北側にある富岡町の海岸近くに震災廃棄物と汚染物の「破砕・選別・焼却施設」が稼動。異様な風景です。今年9月はじめに避難解除された楢葉町。小澤さんらの調査では、場所によって高いベクレルの値があるという。公園で遊んでいた親子連れに小澤さんが声をかけると「子供には外で遊ばせてやりたいから」という返事でした。

1日の締めくくりに、ドキュメント映画「福島 生きものの記録」シリーズ3(岩崎雅典監督)を1時間30分鑑賞。ツバメや牛に白班が見られ、野生のニホンザルが人が住めない地域で生活せざるを得ない状況を記録していた。

住民の帰還や「除染」作業に疑問

最終日の25日は、南相馬市の2か所で無料法律相談会を3時間にわたって開催して、住民の悩みや相談事などに弁護士らが応じていました。参加者たちが意見交換をして締めくくりました。

宮城・気仙沼と福島・南相馬とその周辺被災地をめぐりましたが、決定的な違いが一つあります。それは原発事故の影響が色濃く残るのが福島。住民の帰還問題に絡んで、住民本位で事が進められているのか。「除染」作業が多額の税金を投入して各地で盛んに行われていますが、どこまで効果が期待できるのか。現地を訪ねてみて、疑問が募る旅でした。